初陣から全国制覇まで、濃くてあっという間だった6ヶ月の軌跡|高松宮賜杯2部 佐賀県代表・井手解体実業【続編】

初陣から全国制覇まで、濃くてあっという間だった6ヶ月の軌跡|高松宮賜杯2部 佐賀県代表・井手解体実業【続編】

始動1年目、選手12人で9月の高松宮賜杯2部全国大会を制した、佐賀の井手解体実業。全国制覇から1ヶ月半が経ち、ずっと続きの話の構想を練っていて、ようやく完成しました。

かなり長いと思います。たくさんに人に届かなくてもいい。どなたかの心に残る記事になればいいなと。何より私の素晴らしい思い出としてここに書き残します。

初陣から全国制覇までの道のり

今年の3月、初めてみなさんにお会いしました。
その日はチームの初陣だったけど、雨で中止に。ただ、アップをするみなさんの様子を見てとてもわくわくしたのを昨日のように思い出します。

それから半年後、全国制覇。

さらっと書きましたけど、すごすぎませんか?
しかも選手は12人しかいません。
全国大会は3日で5試合と超過酷。
コールドは1度もなく、逆転勝ち3度。

決して楽な戦いではなかったけれど、みなさんの能力の高さはもちろんのこと、気持ちの強さ、団結力、そして積み重ねてきたものが出し切れた。
そして私は12人だからこそ達成できた、と思っています。


3月に初陣を見れず後ろ髪を引かれる思いで千葉に帰り、初めて試合を見れたのは4月の県大会。
直前まで高校野球の仕事で佐賀にいて、なんという巡り合わせなんだ!と感動。
ただ試合はさくさくと5回コールド、43分であっという間に終わってしまいました(笑)

県大会を優勝し、九州大会へ。

7月に鹿児島でみなさんと再会し、目の前で全国大会出場を決めてくれました。
初めて見た4月よりもさらにチームとしての結束や雰囲気がよくなっていて、12人しかいないことがハンデではなく強みに感じたのはこの試合でした。

初陣から負けなしで全国を決め、全国では苦しい試合を勝ち抜き、頂点まで駆け上がりました。
1年目。選手12人。ものすごいことをやってのけたみなさん。過去にこんなチームいたのかな。とんでもない快挙だと思います。

みなさんなら大丈夫と思っていたけど、試合は何が起こるかわからない。
先制されたり逆転を許したときはざわざわして、自分自身に大丈夫と何度も言い聞かせました。そうしないと撮れなくなっちゃうので。頭はいつも冷静だけど、心を保つのは大変でした……。

初陣を見れずに千葉に帰った時は先が思いやられたけど、まさかこんなに素晴らしい結果を目の前で見せてくれるなんて。

私は千葉に住んでいて、佐賀は決して気軽に行ける距離ではないです。鹿児島も北海道もそう。
それでも撮りたいと思わせてくれるチームだった。
叶うものなら、全部の試合を見たい。
今ではそう思うほどです。

ここから先はもう私の気持ちをダラダラ書くだけなんで、ついて来れる方はぜひ熱い思いを聞いてください!(笑)

12人全員のことを書きます!

#10 木岡大地選手(主将)

初見で「こんなにキラキラした選手いるのか!」と、華のある選手に出会いワクワクしました。
そんなプレーの見た目に反し「色々考えて話し合い、突き詰めて野球をするのが好き」と聞き、ギャップにまた惹かれました。

木岡選手と話してると時間を忘れてしまいます。そのくらい自分の意見を、意思をしっかり持っている選手。
大卒3年目ですがキャリアは申し分なく、チーム内で積極的に発言する姿から本当に強くなりたいというのが伝わります。このチームに来てから挑戦しているショートの守備もらしくなってきて、全国では好守連発でした。とっても頼もしいキャプテンです!

#27 鶴田都貴選手(兼任コーチ)

高松宮賜杯での3日で5試合、フルイニングマスクを被り、打撃でも勝負強さを披露。
チーム最年長で相当負担も大きかったと思うけどやっぱり「疲れました……」と。そうだよね。
しかも鶴田選手自身はこのチームに来るまで7年間、現役から離れていたので(大学の野球部でコーチをされていた)余計に、です。
でも、やはり安心感が絶大です。

私が話を聞いても多くは返って来ないけど一言に重みがある。愛を持って厳しく指導してされているんだろうなというのも、伝わってきました。監督も本当に頼りにしていると思います。

#18 谷口碧投手

チームの大黒柱。全国大会では2完投でMVP獲得!
谷口投手は福岡の高校を卒業後、硬式の社会人野球チームでプレーされていたそうです。
昨年地元佐賀に戻るタイミングで野球に一区切りつけましたが、中学で一緒にやっていた中島選手に誘われ戸上電機製作所へ。
野球はもういいかなと思っていたけど、県独自の大会で優勝し「野球やっぱり楽しいな」って。そのタイミングでこのチームに出会ったそうです。軟式はまだ2年目と知って驚きました!

お話を聞き、試合は結果にもこだわりたいだろうけど、一番根っこに「楽しい」がある選手は強いなと感じました。堂々のMVPです!

#26 江島幸ニ投手

私は何も知らずに4月、江島投手の球を見て「え、すごくない?何者なの??」ってびっくりしたのを覚えています。伺えば大阪桐蔭出身って……納得。
その試合にご家族だと思いますが、私の撮っているすぐ横で観戦されていたんですけど、すごくうれしそうに江島投手のことを見てたんです。
ベンチ前でキャッチボール始めたら「投げるのかな」ってワクワクしてる様子が手に取るように伝わってきた。そのご家族の姿を見てなんて素敵なんだ!と。

勝手な印象であまり話してくれなそう……って思ってたんですけど、話してみたらとても穏やかでかわいらしく、自分の言葉でしっかり話してくれる選手でした。早く江島投手の真っ直ぐをスピードガンのある球場で見たい!

#14 中尾将幸投手

このチームで唯一、別のお仕事をされている中尾投手。全体練習に参加できない日もあるとのこと。
全国大会の2回戦で先発を告げられた時には前日からものすごく緊張し「試合をぶち壊してしまったらどうしよう」と不安があったそうです。「壊れる前に変えるから大丈夫(笑)」って監督はフォローしていたけど、味方の援護がないなかゼロを並べ、次へバトンをつないでくれました。

12人のチームに投手が監督含め4人もいるのはすごいこと。だから連戦でも乗り越えていけます。このチームに来てくれてありがとう!若い選手たちからもいじられてて、ほほえましかったなあ。

#4 宮森拓哉選手

全国大会での3日間で一番お話ししたのが宮森選手です。最強の9番打者!
優秀選手賞を獲得した活躍ぶりからも自然とお話を伺う機会が多かったのもあるけど、とにかく話しやすい(笑)いっつもニコニコしてて人懐っこくて。試合では結構ナイーブになってしまうところも含めて、お人柄がとても魅力的な選手です。

宮森選手は野球から離れた時期が少しあるのですが「自分は本当に野球が好きなんだな」と気づき、30歳になる今が人生で一番真剣に取り組んでいるそうです。野球への愛が溢れていて素敵だなあって、なんだかとてもうらやましくなりました。

#25 斉藤大志選手

6番を打ち、レフトを守る斉藤選手。
試合を決めるような派手な活躍はなかったけど、流れを見ながら写真を選ぶと必ず斉藤選手がいました。それだけカギを握る選手だったのです。

これまで話したことなかったけど全国の閉会式前に「結構打ってたよね」と声をかけました(のちに打率計算したら全国では4割近く打ってた)。すると斉藤選手は「バントも多かったし……(5番を打つ)鶴田さんが全部(走者を)返しちゃうから」と笑ってました。
チャンスメイクやつなぐ役割を果たしてくれ「いいつなぎの6番だったよ!」と伝えると、控えめだけどうれしそうにしてくれてました。小柄だけどパンチ力があり、私の印象にはすごく残ってたので直接伝えられてよかったです。

#2 中島陽己選手

私が初めて見た試合からずっと4番に座ってた中島選手。全国ではなかなか結果が出ず、決勝はスタメンを外れ、すごく苦しい3日間だったと思います。
でも決勝で代わりに4番に入った江口選手が活躍して、それを迎える中島選手の顔を見たら、ああほんとこのチームの選手みんな素敵だわ……って。

たまたま結果が出なかっただけで、そういうときもあるから大丈夫。何の心配もいりません。やってきたことが無駄になるわけじゃないし、全部が糧になるので。持ち味を活かした打撃は失わないでほしいです。

高卒ルーキー3人が全国でも躍動!

冨田選手、藪野選手、江口選手。3人がそれぞれ良さを存分に発揮して活躍!みんなすごいなあって見てました(語彙力)。

#9 冨田伊吹選手

何度もセンターでファインプレー見せてくれた冨田選手。守備範囲が広すぎて驚きます。センターラインしっかりしてるチームは安心感ありますよね。お母様とね、よくお話しするんですけどかわいらしくて大好きなんです。いつも応援来られてて、江島投手のところでもご家族に触れたけど、一番のファンですからね、ご家族が!

#4 藪野翔選手

藪野選手も印象的な守備が多かったな。いいところで一本も出たし。高卒ルーキーズの中でも一番お話上手。しっかり自分のプレーに対して言語化できるのがすごいなって感心しました。なかなかできないんですよ。準決勝でのビッグプレーがなかったら……あれは大会No.1の守備だったかもですね。
藪野選手のご両親が「野球で北海道に連れてきてくれて本当に幸せ」とおっしゃっててこちらまでうれしくなってしまいました。

#11 江口翔飛選手

本来投手の江口選手ですが、途中出場で必ずヒットを放ち、決勝は4番に座っていきなりタイムリー!
なんという勝負強さと集中力。振りが強くて積極的。ベンチスタートでもしっかり試合に入っているから結果出せるんですよね。準備がちゃんとできてる。高卒1年目ですよ?そう見ないです、こういう選手。来年は投げているところが見れたらいいな。

そして、最後は監督で締めたいと思います!

#30 古川敬也監督

始動して1年足らずでC級とは言え全国制覇するチームを作ってしまうなんて。改めて思いました。やっぱりすごい選手だったんだな、と。
千葉のチームにいた3年間、たくさんプレー見させてもらいました。
全国(天皇賜杯)準優勝に終わってから2年。
チームが変わり、クラスは違えど全国で優勝できたことは私的には本当に感慨深かった。チームの駆け上がっていく感じも、当時と少し重なって見えた。

監督に対しては書き出したら止まらなくなるので頭の中で懸命にブレーキかけながら書いてますけど(笑)、どこにいるとか、距離とか関係ないんですよね。野球を続けていてくれる限り、どこにいても私は会いに行く。

試合の記事にも書いたように、ここまですごく大変だったと思う。
監督と選手、どちらの立場でも結果出す難しさ。
とてもクレバーだと思うからうまく切り替えてやれているのだろうけど、選手としての自分だけに集中できず、よいパフォーマンスが出せなかった全国ではもどかしさを感じたのではないかな。それでもプレーで気持ちを見せてチームを引っ張る姿は本当にかっこいい。全国制覇という結果がついてきてくれてすごくホッとしました。

優勝の瞬間、感動して私泣くかなって思ってたけど「よかったー!」という安堵感が勝ったのか涙は出ませんでした。

初めてプレーを見た2016年から気づけば8年。
まさかこんなに素晴らしい景色を見せてくれるなんて、あの頃は想像できなかったし、2年前に全国決勝で涙を飲んだ時もそう。ちょっと現実が信じられない感じですが、今でもこうして撮影できること、本当に幸せだなって思います。

とっても濃くて、あっという間だった6ヶ月

みなさんへの暑苦しい思いを書かせていただきました。すみません。こうなるとわかっていたから、試合とは別の記事にしようと。12人全員のことが書きたかったし、大変満足しております。自己満です。

試合後、監督が話してくれたように、この全国制覇が「スタート」です。

来年はB級の舞台でまた驚かせてください。
たくさん試合見せてください。
最高のチームでした!みんな本当にありがとう!

雨で中止になった3月の初陣

3月からの半年が一瞬のようにも感じるし、ものすごく長かったようにも思う。不思議な感覚です。7試合しか見てないとも思えるし、7試合も見れたって感じもあるし。もしかしたら今年一番試合見てるチームかもしれない。佐賀のチームなのに。

仲良くしてくれてる、千葉の某チームOBが私に言ったんです。
「そろそろなおこさん千葉を出ていっちゃんうんじゃないかってくらい、飛び回ってますよね(笑)」って。それを聞いて、ああそんな風に見えてるんだってびっくりしたけど、これまでもこれからも変わらないのは「会いたい選手に会いに行く」ってこと。

これはまた別の機会にも書こうと思っているのですが、千葉の社会人軟式に出会いハマったころは「めちゃくちゃ面白いからみんな見て!」という気持ちが大きかった。「社会人軟式を愛しています!」みたいな鼻息荒い感じね。私が広めるんだ!みたいな謎の使命感とか。

でも最近はちょっと違ってきてます。ずっと同じなんてありえなくて、使命感とかそういうのもなくなってきてて。ただ好きでおもしろそうという方に自然と流されていってます。

今は「社会人軟式はめちゃくちゃおもしろい。こういうチームや選手が好きです!」と、狭く深くなってきてる感じ。
それはありがたいことに撮り続けて9年経ち、たくさん見てきたからこその感覚なのだなって思っています。

だから自分の琴線に触れるチームや選手に出会えたら、どこにだって行く。

見てくださる方が増えたからこそのありがたい悩みというか、ブレる感じは正直ありましたけど(だから昨年ドロップアウトしてしまったんだと思う。今でも悩みや不安は尽きない)、戻って来れたというか、私がいいと思ったものしか作れない、仕方ないなっていい意味での諦めが出てきました。

それでも私の価値観に共感して見てくれる方がいたら大変うれしく思います。

全国大会の、その後

本来であれば、全国大会のあとは「また来年」だったのですが。

10月10日から国スポで佐賀に行き、晴天に恵まれ雨天順延なく終了。
万が一の順延に備え1日多く滞在予定してたので、大会終了翌日に練習見学をさせてもらいました。チームができたときから願っていたことで「全然大丈夫です!」と言ってくれた監督と、受け入れてくれた選手のみなさんに感謝しています。

少ない人数で練習するのは大変。
誰も手の空いている人なんていなくて、投げて打って走って守備について……試合では見れない表情が見れたり、この人数でどんな練習を、どんな雰囲気でやっているのかずっと見たかったので、撮っていて全部が楽しかったです。

私はみなさんがお昼休憩に入るタイミングで撤収し、空港へ向かいました。
この日がみなさんにお会いする、今年最後の日になるはずが……なんともう一度チャンスがやってきました。

今年最後の大会、佐賀県選手権が雨で順延し、準決勝・決勝が10月27日にスライド。今月この日だけ空いていたという奇跡。強行して佐賀に行ってきました!その様子は改めて記事にします。

練習風景、どの写真も大好きです。みなさんいい顔してる。これからは可能であればいろんなチームの練習を見てみたいな。

最後まで見ていただき、ありがとうございました!

error: