笑顔の連覇を見届けて|試合ルポ・続編【天皇賜杯千葉県大会決勝】

笑顔の連覇を見届けて|試合ルポ・続編【天皇賜杯千葉県大会決勝】

先日更新した試合ルポの続きのお話。
私が感じた素直な感想と、優勝したAKIRAを中心に監督・選手の声をお伝えいたします。

▽試合ルポはこちら

AKIRAが2年連続2度目の頂点!延長で習志野市役所を振り切る|試合ルポ【天皇賜杯千葉県大会・決勝】
AKIRAの連覇で幕を閉じた、天皇賜杯千葉県大会。決勝にふさわしい好ゲームを振り返ります。試合を観ていない方にもリアルに感じていただけるように写真満載でお届けし…
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笑顔満開の連覇

集合写真、改めてみなさんいい顔してるなあ。

私がAKIRAのみなさんを初めて見たのはAクラスに昇格して2年目の2019年?だったかな。
みなさんが「え、なんか変わった」と感じたのは翌年の2020年ころから。少しずつ個々の能力だけじゃなくて、ベンチワークもよくなって笑顔が増えた。

本当におめでとう!

昨年、涙の初優勝

私はみなさんが涙しているのを見て驚きつつ、能力の高いみなさんでもなかなか優勝できなくて苦しかったのかな……とネット裏でもらい泣きしながら撮っていました。
昨年の記事、改めて貼っておきます。まだサンニッパを立ち上げる前の記事ですので、好き放題書いてます。今も基本、変わってないけれど。

(8025文字/写真51枚) ※写真の無断転載、二次使用はご遠慮ください 激闘の天皇賜杯千葉県大会が終わり、早10日。 思ったより疲れていて、最終日の記事を更新…
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劇的な逆転勝ちで優勝したAKIRA。 多くの選手が泣いていました。 Cクラス時代からチームを知る選手、監督の涙が印象的でした。さらに独立リーグから軟式に転向して…
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この優勝にたどり着いた涙も、一昨年の負けがあったから。

AKIRA・中川太地監督(32歳|東洋大牛久―東洋大・準硬式) 突然の監督交代 「AKIRA、監督代わってる」 天皇賜杯千葉県大会が開幕した日、選手名簿を見て驚…
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AKIRAの、この3年間は濃すぎた

昨年、県大会優勝から初めての全国の舞台、そして水戸市長旗、スポニチ杯での優勝を私は近くで拝見しました。のびのびと自分たちのパフォーマンスを出し切るみなさんは試合を重ねるごとにどんどん強くなり、あっという間に全国の頂点に立ってしまいました。

今年は監督が代わり(前監督の中川さんは今年裏方としてチームを支えていました)、昨年大車輪の活躍で大黒柱の丸山投手が投げられない中、昨年あまり試合に出場できなかった選手やルーキーたちも躍動し、連覇を成し遂げました。それは安易な言葉でしか綴れないけれど、すごいことだと思います。

連覇のかかる今年は進化の問われる重要な1年でした。

全チームが「打倒AKIRA」で来るだろうし、千葉にはいいチームがたくさんあって簡単には勝たせてくれない(実際、国体予選では京葉ガスに敗れています)状況で、天皇賜杯の連覇は叶うのだろうか……と気になっいたので「AKIRAの試合は全部観る」と決めて私はこの大会に臨みました。

一昨年の負けから今年の連覇まで3年間は、私にとっても濃い時間となりました。

~AKIRA・久保田勇選手兼任監督の話~

サヨナラの場面、覚悟を決めたリード

試合後に聞きたいことはこの試合展開で全部吹っ飛んでしまって、何を聞いていいかまとまらない中で久保田勇選手兼任監督(ここからは久保田監督の表記にします)と話をしました。

「負けたくないけど、負けを覚悟してリードした」

9回の状況を話してくれた久保田監督。深い言葉ですよね。しばらく私は考えてしまいました。あの場面でルーキーの森屋投手をマウンドに送ったのも「翔さん(中川投手)もジュリアン(高井投手)も準備してくれていたけど、森屋のスライダーが決まれば絶対に打たれない自信があった」そうで「だけど(打たれた場合)自分が尻拭いをちゃんとしないといけない」と覚悟を決めていた。

この話を聞いて、国体予選で京葉ガスに敗れた時の「高井が打たれたのは自分も悪かった」って言葉を思い出しました。同じことにならないよう、腹を括ったのだと思います。

▽国体予選敗退後に書いた、久保田監督のエピソード記事

「考えることが好きなので監督業も楽しくやれています」兼任監督として挑むシーズン|AKIRA・久保田勇眞選手
国体千葉県大会、1番の驚きはAKIRAの監督が久保田勇眞選手になっていたこと。専任ではなく、兼任です。昨年同様、6番・捕手としてスタメン出場。 30番を背負い、…
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継投に関しては「武さん(小川投手)があそこまで完璧だと次に行く投手が大変なので代えづらかった。もし早めの降板でも次は森屋と決めてました」と、きちんとチームの戦力と現状を把握して最善を尽くせた結果なんだなあ、と。エピソード記事でも試合ルポでも書いたけど、捕手やって中軸打って監督やって、すごすぎる。

そういえば、打順も5番にあがってました。

「自分の打撃が調子よかったのと、打線が右左でジグザグになると投手は投げづらいというのもあって」
3番の藤井選手は右、4番の古川選手は左……なるほど。1番2番は左が続くけど、あとは全部交互。

打者が右と左で変わると、投手は微妙に投げ方が変わるそうです。無意識で。それには小川投手もうなずいてました。「確かに数センチ、開きとか変わってるかも」と。久保田監督いわく「投手はミットを見てるけど結局は打者を見て投げるから、的が変わると同じように投げられない」んだそうです。無意識の力、おそろしい。

「負けないチーム」になってきた

最後に、決して楽ではない戦いの中でも勝ち切れたことには「どんどん点を取って勝つのではなく、こういう勝ち方(先行されても追いついて逆転したり、最後振り切れたり)ができるようになった。負けないチームになってきたのかな」とおっしゃいました。

私はこの「負けないチームになった」という言葉がまさに今大会を象徴しているし、本当に強くなった、チームの力がついたってことなんだろうなと感じました。

全てを背負ってチームを引っ張ってきた久保田監督が報われて本当に良かった。私はそれが一番でした。

監督の胴上げはなし?!

表彰式が終わり、集合写真を撮り終えたあと、普通なら監督胴上げの流れになるのですが、ならなかったんです。あれ、おかしいなと思って「監督胴上げしないのかな?」と私が尋ねると選手たちが「重いから無理」って(笑)久保田監督も「ひどいですよね」って笑ってましたけど、ちゃんと胴上げしました。確かに大きい久保田監督なので、大変そうでしたけど。

高井投手はポジション取りがうまい。監督より目立ってます(笑)

~選手の声~

試合が決まった、10回表の場面。

1死一三塁で回ってきた4番の古川選手は「叩く気満々だった」と、自分が決めるというイメージはしっかりできていたようです。私も藤井一輝選手がつないで一三塁になったときに「これ、古川選手が決めちゃうやつだな」と感じました。そのための(撮る)準備、イメージを私もしていたので、暴投で勝ち越したことでちょっと焦りました(勝ち越しの生還はうまくおさまってホッとしたというのが私の本音です)。

痛めた足の影響で準決勝は出場がありませんでしたが、決勝、最後まで出場して歓喜の輪にいてくれてよかった。

2016年、四国ILの愛媛に在籍していたときに古川選手を知り、以降大阪シティ信用金庫でもAKIRAでもプレーを見てこれて幸せだなって改めて感じました。

古川選手個人として、天皇賜杯だけ獲っていない(国体と西日本は前所属の大阪シティ信用金庫で、東日本はAKIRAで、スポニチ杯は大阪シティ信用金庫とAKIRAで2度、頂点に立っています)というので、ぜひAKIRAで天皇賜杯獲ってほしいです。こうして書くとすごいですね。優勝請負人かな。

歓喜の輪の中央に古川選手

もういろいろ話聞いたのに聞きすぎて頭の中パンクして今に至りますが(みなさんごめんなさい)、スタメン野手最年長で、決勝点のホームを踏んだ岡本選手は「負けたら引退しようと思っていた」そうです。「みんなが頑張ってつないでくれた」と引退は先延ばしに。久保田監督も「(現役)継続ですよ」って。

AKIRAがCクラスにいた時からチームを知る貴重な選手で、独立リーグの選手たちが加入してチームが変わっていくとき、強くなっていく過程、全部見てるんです。強くなるチームってベテランがしっかりしていてこそだと思います。縁の下の力持ちじゃないけど、岡本選手の存在は大きすぎます。

10回、岡本選手のヒットが流れを呼びました

決勝で先発した小川投手。実は初回にもう両足攣った状態で「こんな状態で投げたの初めて」と、もうみなさん満身創痍だったんですね。大黒柱の丸山投手が不在で、昨年たくさん経験を積んだ高井投手と小川投手が軸となって戦ってきました。

小川投手は3年前の天皇賜杯千葉県大会準決勝(対京葉ガス)、1点リードで救援登板し9回に同点弾、延長でサヨナラの押し出し死球というつらい経験をしました。その後、自らのスタイルを変えて、昨年から安定した投球を続けチームの勝利に貢献しています(エピソード記事はこちら)。自分を変えるって簡単なことではないので、ひそかに尊敬してます。謙虚に自分を見つめなおして変えられるって素晴らしいです。

安定感がめちゃくちゃ増した、小川投手

天皇賜杯ではこれまで出場機会に恵まれなかった若い選手たちも躍動しました。その経験は全国に向けても大きかったと思います。

ルーキーの森屋投手は胴上げ投手に、同じく来田選手、加入1年目の久保田碧選手も出場がありました。高卒2年目の毛利選手、3年目の植田選手も大事な場面で代打、代走を経験。投手も全員登板しました。加入2年目の會田選手は準決勝、久保田監督に代わってマスクをかぶり完封リレーを演出。ホームランも放ちました。

優勝を目指しつつ、選手の経験も積ませるって至難の業ですが、国体予選で優勝した松戸市役所の滝沢監督も「全員を使えたことが優勝できた一番の要因」と話してたっけ。

出場がなかったのは控え捕手でチーム最年長の藤井一樹選手だけですが、藤井選手はブルペンとベンチを何度も往復してはキャッチボールの相手をつとめ、ベンチでは先頭に立って仲間を迎え、誰よりも声を張り、チームを支えました。昨年の県大会決勝、優勝の瞬間はマスクをかぶっていたんですよね。岡本選手と同じで、ベテラン選手の存在意義というのを藤井選手からも感じます。

チームを支える最年長の藤井一樹選手(中央)

前年とこれだけいろいろ変化があったなかでも連覇できたAKIRAは本物の強さを手に入れつつある気がし、全国大会がめちゃくちゃ楽しみになりました。

昨年AKIRAが強すぎて、必然的に撮る試合数も増え、1年間ほぼ密着取材状態で撮影させていただいたおかげで、みなさんとお話しする機会も増えました。本当にいつもありがとうございます。
今年も9月の全国と、11月の、こちらも連覇がかかる水戸市長旗と、まだまだみなさんのプレーが見られると思うとワクワクします。引き続き、よろしくお願いいたします。

敗れた習志野市役所のみなさんのお声も聞きたかったですが、たぶんもうみなさん帰られているしな……と思っていたところ、球場の駐車場でセカンドの鈴木選手と会えまして「めちゃくちゃ悔しいです」と鈴木選手の方から声をかけてくれました。

AKIRAとは初対戦でしたが「AKIRAのみなさんは守ってて怖かったです」と、おそらく打者のみなさんにものすごいオーラがあるんでしょう。それは守備位置から打者を眺めてみないとわからない感覚。この一言だけでもお話を聞けた価値がありました。貴重なお話をありがとう。

ケガをしっかり治して、また元気な姿をみせてほしいです

おわりに 

私が大切にしていること

試合ルポの続きの話を、つらつらと思うままに書きました。

私はもうどこのファンとかそんな小さな話ではなくて、みなさんが悔いなく自分のパフォーマンスを出し切ってくれたらそれで十分。結果はあとからついてくるものだから、それまでの過程を大切にしっかりと見届けたいという気持ちで撮影に臨んでいます。

喜びだけじゃなくて、悔しさも悲しみも全部、みなさんがひたむきに頑張ってきた姿だし、ありのままを全て感じて写真という形で残したいんです。

社会人軟式野球は正直マイナーなカテゴリーだし、なんでそんなに熱くなれるの?って私に対して思っている人もいるかもしれない。だけど、試合観たらわかります。でもそれはわかる人がわかればいいし、伝わる人にはちゃんと伝わるから私は私のままでこれからも発信活動を続けていきます。

社会人軟式野球が最高に面白いし、選手たちがみんなかっこいいし、撮り手の私が一番楽しんでいるし、現場にいるときが一番幸せなので、それだけでいいんです。

ただもし、私の思いに共感してくださる方がいたらうれしいし、一番は私の写真を通して選手たちが自分たちのプレーや取り組みを誇りに思ってくれたら、この上ない喜びです。そして、願わくばそういうお声はどんどん私に届けてほしい。お問い合わせフォームや公式LINEをご活用ください。活動の励みになり、作品がより深みを増していきます。

天皇賜杯千葉県大会、6日間ありがとうございました!

梅雨空の中、今大会は1度も順延がなく大会が終わりました
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