AKIRAの連覇で幕を閉じた、天皇賜杯千葉県大会。
決勝にふさわしい好ゲームを振り返ります。試合を観ていない方にもリアルに感じていただけるように写真満載でお届けします。文章は現場で感じた100%私の主観です。その点ご理解いただけますと幸いです。
▼試合結果
AKIRAと習志野市役所はこの試合が初対戦。なので私もどんな雰囲気になるのか、試合展開になるのか、全く想像がつきませんでした。昨年の覇者とはいえ、AKIRAも決して楽な勝ち上がりではなく、一方の習志野市役所は松戸市役所(昨年準優勝、今年の国体予選優勝)、京葉ガス(昨年の国体予選優勝)に勝利し決勝にたどり着きました。チームの士気も高まっています。
先攻はAKIRA。習志野市役所の先発はエースの原投手。直前の準決勝では8回から救援し2イニングを投げています。国体予選で150キロを計測した直球が魅力的ですが、決勝は抑えめの立ち上がり。
AKIRAは2死から3番、主将の藤井一輝選手が右中間二塁打。
得点にはつながらなかったものの、ここまで初戦から18打席で1安打と苦しんでいたキャプテンにようやく復調の兆しが。
AKIRAの先発は小川投手。
準決勝で3安打と打撃好調の習志野市役所1番・竹中選手を三振に打ち取る最高の立ち上がり。
小川投手が三者凡退に抑えると2回表、AKIRAは先頭の5番・久保田勇選手が左中間へ二塁打を放ち、無死二塁と先制のチャンス。兼任監督の久保田勇選手は息を整える間もなく、次打者の竹谷選手に塁上からサインを出します。
6番の竹谷選手。たたきに行ったスイングに見えましたが、打球はハーフライナーでレフト線へ。打球を見つめる竹谷選手も、一瞬ファールを確信したような表情。しかし、ぎりぎりフェアゾーンに落ちヒットになります。
ベンチ前で歓喜のハイタッチをする久保田勇選手。打席では次打者がサインを待っていて「忘れてないかな、間に合うかな」とちょっと心配に。ベンチの端までハイタッチして、慌てて戻ってきてサイン出してました。大変すぎる。
習志野市役所の原投手は1点を失いますが、後続を断ち最少失点で切り抜けます。私が見始めたころは脆いところもあったのですが、ものすごく強くなりました。さすがエースです。
先制された習志野市役所は2回裏、先頭の4番・石井選手が四球、続く5番・田村選手の打球を華麗にさばいたのはAKIRAのショート・西田選手。もうため息が出るほどうまいです。いや、実際ため息出ました。ひとで「うまいなあ……」って言ってました。
習志野市役所は1死二塁、6番・中橋選手がレフトの頭上を越える適時二塁打を放ち同点に追いつきます。中橋選手は塁上で激しくガッツポーズ!
すぐに追いつかれたAKIRAは3回表の攻撃は1番から。
森光選手がセンターの前に落ちるヒットで果敢に二塁を狙う好走塁!今大会、打撃で苦しんでいるようだったので、このヒットがきっかけになるといいなと思いながら見てました。
2番・岡本選手、三塁前の絶妙なバントは内野安打となり無死一三塁と勝ち越しのチャンス。習志野市役所はマウンドに集まります。
輪が解けて守備位置に戻るとショートの竹中選手がもう一度野手に声をかけます。
竹中選手の声は冷静でかつ的確でどこか穏やか。そして撮っている私も勉強になる声がたくさん聞けるので逃さず聞きたい。
無死一三塁。AKIRAは3番・藤井一輝選手がたたきを決めて勝ち越します。第1打席でヒットも放ち、たたきを決めてベンチに戻るときも少し笑顔が見られてホッとしました。ずっと視線が下向きだったのが気になっていたので。
1死二塁と変わり4番・古川選手は遊ゴロ。二塁走者が三塁へ進み2死三塁。5番・久保田勇選手が外側の球に食らいついて右前へ運びさらに1点を追加します。
準決勝は監督業に専念した久保田勇選手。2打席連続安打。2回戦も準々決勝も出た試合全てで安打を放っています。さすがです。
3回を終わって3対1でAKIRAがリード。
中盤はたがいに我慢の展開。試合を引き締めた守備写真、一気に見せます!
両チームともチャンスらしいチャンスはなく5回終了。
6回表、AKIRAは1死から竹谷選手、西田選手の連打、さらに死球で満塁と大きな追加点のチャンスが来ます。
満塁で打席は9番・小川投手。打球はショートから本塁に送られ2死。さらに習志野市役所の捕手・宍倉選手が体勢を崩しながらも諦めずに一塁へ投げ、アウト。習志野市役所は併殺でピンチを切り抜けます。
ピンチをしのいだ習志野市役所はその直後の6回裏。先頭は9番・鈴木選手。気迫のヘッドスライディングもわずかに及ばず。
双方、ホームが遠い展開。守り合い、しのぎ合い。どんな結末が待っているのか。
私は7回くらいから結構緊張しながら撮っていました。頭の中では起こりうるすべての状況(このままAKIRAが逃げ切るのか、習志野市役所が追いつくのか、サヨナラがあるのか、延長なのか……)を想定して「どこで何を撮りたいのか」を洗い出しています。準備しておかないと、いざその状況になってから動いても間に合わないからです。試合中は常に今を見ながら先の状況を想定して撮っています。3試合目なので疲労も正直ありました。握力は限界に近かったです(カメラを握って構える姿勢はかなり消耗します)。ですが、展開が展開でしたし、選手たちのプレーを間近で感じていると不思議と集中が途切れることはありませんでした。
7回も、まだ試合は動きません。
追いつきたい習志野市役所、残る攻撃は2回。
8回裏の攻撃にはいるとき、ベンチから主将の田村選手が「もうたくさんボール見させてもらったんだからそろそろ行こうぜ~」と、3回以降ひとりの走者も出させてもらえていない状況をなんとか打破しようとチームを鼓舞する声。
すると1死から8番・矢口選手が中前に運び、2回以来久しぶりの走者を出します。9番・原投手の代打・ルーキーの西秋選手もヒットで続き1死一二塁とします。
9番・鈴木選手の大きな当たりはAKIRAのセンター・藤井一輝選手が背走して好捕。走者はタッチアップで進塁します。この時、一塁走者の代走・長岡選手が二塁へ進んだ好走塁が非常に大きかった。
7回までの5イニングひとりの走者も出していなかった小川投手。2死二三塁、一打同点の場面。次打者はここまで無安打も、準決勝で3安打している1番・竹中選手。
8回裏2死二三塁、1番・竹中選手は中前へ起死回生の同点打を放ちます!
8回、試合は振り出しに戻りました。
習志野市役所は原投手に代打が出たのでマウンドには石川投手。準決勝で7回1失点と素晴らしい投球をしています。ルーキーの石川投手。連戦連投の疲れはいかほどか。
9回表、AKIRAは四球と犠打で1死二塁。9番・小川投手に代打、廣岡選手を送ります。
廣岡選手の打球はライトへ。二塁走者の西田選手がタッチアップしますが、スタートが早かったというアピールでアウトになり併殺でチャンスが潰えてしまいます。
久保田勇選手が審判団に確認を要望しますが、判定通りアウト。習志野市役所にビッグプレーが飛び出しました。このプレーがどう、この後の展開に影響を及ぼすでしょうか。
アピールプレイ成立でよく見られるのは、一度投手にボールを戻してプレイがかかってから、タッチアップをしたベースに送って(今回なら二塁ベース)アウトをアピールし判定をもらう、という流れ。この時はライトからの返球が二塁ベース送られてアピールしアウトが成立。走者がスタートを切っていて戻れなかった場合とタッチアップでも同じなんですね。アピールプレイは難しいです……。とりあえずWikipediaを読んでみたのですが、ボールデッドになったらプレイがかかってから、とあります。インプレイ中なら投手にボールを戻す必要はないみたいですね。勉強になりました。
AKIRAとしては少し嫌な流れの中で、2番手はルーキーの森屋投手。大事な場面を任されました。
1死二塁、主将の5番・田村選手は三振。続く6番・中橋選手が死球で2死一二塁。一打サヨナラの場面で前の打席、ヒットを放っている7番・矢口選手に回りますが一ゴロでサヨナラならず。AKIRAは森屋投手が踏ん張り、延長戦に持ち込みます。
昨年の決勝戦は9回代打逆転2ラン。
今年の決勝戦は延長戦。さすが戦国千葉。もつれないわけないです。
9回、習志野市役所に傾きかけた流れを渡さなかったAKIRAは10回表、1死から2番・岡本選手が技ありの左前打で出塁します(この時、私が撮影している隣で試合を観ていた京葉ガスの青山選手が「あの外側の変化球を引き付けて流し打ちできる技術は岡本選手ならでは。すごい」とうなってました)。
1死一塁。打席は3番・藤井一輝選手。決勝で打撃復調の兆しが見えた主将は、この大事な場面でチャンスを広げる右前打を放ちます。この勝負強さこそ、藤井選手です!
1死一三塁。AKIRAは絶好のチャンスで打席は4番・古川選手。
天皇賜杯から4番に座る古川選手は「ランナー三塁のときのための4番だから」と話してくれてました。確かに、古川選手がたたきで失敗しているところ見たことないかもってくらいランナー三塁の時の打撃はうまいです。そして、こういう「決める」場面に回ってくる星の下にいる。そんなことを思いながらカメラを構えてました。
何球目だったかは、忘れました。
習志野市役所・石川投手の低めの球が後ろに逸れ、三塁走者の岡本選手が生還。AKIRAが勝ち越します。全く予想していなかった展開で私も動揺していまいました。予想してないことが起きてしまうのが野球の、スポーツの怖さでもあります。
10回裏。習志野市役所は下位打線。8番・石川投手に代打、荒木選手。AKIRAのセカンド・森光選手が攻めた守りで出塁を許しません。内野守備が最後までよく集中していました。
9番・鈴木選手も二ゴロで2死。打席は同点打の竹中選手。しかし流れは完全にAKIRAでした。竹中選手の打球は三ゴロ。サードの老平選手ががっちりと。
延長にもつれた決勝戦はAKIRAが習志野市役所を振り切り、2年連続2度目の優勝。連覇を達成しました。本当に強い!
激闘の決勝戦。
こうして1イニングずつ、1枚1枚振り返っていくとどのイニングにも端折れないストーリーがあり、ここまでまとめていくのに9時間、かかりました。撮影の何倍も疲弊し、何度も休憩を挟みながら振り返り、書き続けてきました。
ここまで6500字超。
読んでくださった方、お疲れ様でした。ありがとうございます。
試合後の私の素直な感想と、監督・選手たちの声は別の記事にまとめます。
続きのお話、記事更新まで今しばらくお待ちくださいませ。
6/25追記:続編、書きました👇